見かけではなく
本質を伝えることが
託されていると信じています。

その自覚ゆえに、
私共は熟練の技術と
確かな材料をもとにして、
自信を持って修復作業に
あたらせていただきます。

「なんとかならないですか」

「なんとかならないですか」

その時のご住職の憔悴しきった様子を忘れられません。
依頼されたのは全身が無惨に焼けただれてしまった仏様でした。
平安末期の作と伝えられ、申請すれば重文指定は間違いなかったと思われます。
お姿の様子も判読できないほどでしたが、全体の形が辛うじて残っていたのと、 写真を撮られていたのが不幸中の幸いでした。ほぼ6ヶ月間の修復作業で元通りのお姿を甦ら せることが出来たのです。
これでまた長い年月を生きていただけると思うと、仕事の歓びも格別です。
このように、修復するにあたって最も難しいのは工程ではなく、イメージの再現です。
お寺様は朝に夕に何十年とその仏様を拝まれてきただけに、強い印象をお持ちです。
真新しくなれば、どうしても以前とは違うように映ります。
たとえ古代色を施して旧さを演出しても、元のイメージに適うのは容易ではありません。
しかし今を生きる我々は先人から受け継いだ文化や心を未来へ送り届ける責任があります。




「なんとかならないですか」

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